自称「売れない演歌歌手」今野敏さんの魅力とは?

【今野敏】

大好きな作家です。
ファン歴32年となります。

現在は警察小説の第一人者ですが、デビュー時はジャズと武道を絡めた作品、レコーディングでの作品、警察小説中心になってもライブハウスの事に触れたりで、御本人が音楽好きである事は確かです。

元々サラリーマン時代は東芝EMIに勤めておられ、デビュー作もジャズ物でした。

何故この作家が好きになったかといえば、文章の分かりやすさ、言葉の選択の妙、読後がさわやか、なにより読みやすい
(最初は入院していたベッドでの読書である。)

毒のない文体である事が災いしたのか、本当に長い間売れなかった。
かなり大きな本屋でやっと手に入る。
古本屋に行かないと買えない本も多かった。

「波濤の牙」(海猿の原点と思う)、「蓬莱」、「イコン」など、なぜブレークしないか不思議であった。
こんなに面白いのにである。

STシリーズで徐々に注目を集め「隠蔽捜査」でやっとブレーク。
それまで自身を『売れない演歌歌手』と呼んでいた氏。

多作家である。
そして道場を持つ武道家である。

作品の出来不出来の激しい作家とも言われている。
なのにデビュー時の作品も再びセールされる作家である。

較べるのもどうかと思うがゼップの4thも発売当時、評論家から「ゴミ」と言われたらしい。
信じがたい話だ。

昔、古本屋で氏の作品を見つけ巻末をめくりながら、「初版」の文字を見つける度に小さなため息を漏らした。
STで初めて増刷を体験する。

30年以上売れずに道場経営を継続し、今でも武道の鍛錬を欠かさない異色の作家。

私の好きな文章の作家であり、一番長く読み続けている作家である。