響きすぎる大きなリビングの一角だけのサウンドデザイン【勾配天井を採用したIさまの事例】

【サウンドデザイン】Uさまの事例

玄関を入ったら直ぐに大きなリビングです。

この部屋には元々アップライトピアノが 1台置かれていました。
グランドピアノを新たに購入されるにあたり、「響き過ぎるこの部屋の音響を整えて欲しい」との依頼です。

図1がピアノの配置図です。

さてどうしましょう?

部屋全体にサウンドデザインを施す事は可能です。
しかしそうすると、工事の規模も金額も大きくなってしまいます。

そこでピアノを設置している空間のみの音響を整える事にしました。

それが図2です。
なるべく壁も触らずにやって欲しいと言われました。
うーん、

いつもながら、この仕事は難しい。

音の結界を

床からの一次反射音を天井で吸音するのですが、ピアノを設置しているエリア内のみで音の処理を行うようにしました。

即ちこのエリアとそれ以外の部分は音響を変える様にしました。
まるで音の結界みたいです。
(事実そうなのですが)

具体的にやった事は、まず天井を勾配天井にする事にしました。
元々の天井はフラットなので、勾配の部分で空気層を発生する事を狙いました。

空気層が発生するという事は天井の仕上げに合板を使用するので、その合板に吸音できる部分を作る事が出来る。
吸音出来る部分と反射出来る部分とを勾配による空気層で変化を設け、反射する不要な音は和室側と玄関側に逃がす。

一口でいうと、この勾配天井にはそういう意味があります。

そして、天井の3つのコーナーに面するパネル、図面の斜線の部分です。

床からのピアノの一次反射音を斜めに飛ばし、ピアノを包囲するよう反射のデザインを施しました。
音の方位を定め、拡散の役割です。

3箇所でこのように音を決めてしまったので、溜まった音を逃がすところが必要。
それが図面の右側となります。

凹んだ部分です。
ここを音のポケットと想定して音を逃しています。

このような芸当が出来たのは部屋が広く壁方向も余裕があったため、床からの一次反射音の処理がしやすかった事。
結界部分と天井のポケットに音を逃がす事が出来たなどの条件に助けられた事です。

勾配天井が作れる天井の高さの余裕なども、音響をコントロール出来た重要な要素です。

アップライトピアノはほとんど弾かないとの事で、グランドピアノのみに絞り、天井のデザインが出来た事も仕事のやりやすさに繋がりました。